こんばんは、ちいです。本日はもやもや病の経過についての説明や、経過中に気を付けることについて説明させていただこうかと思います。

もやもや病の管理に関しては

  • 脳卒中急性期(脳梗塞、脳出血)
  • 慢性期の再発予防
  • 無症候性もやもや病

に大別されます。

脳卒中急性期の管理について

・脳梗塞

脳梗塞で発症した場合、4.5時間以内であればtPAという血栓溶解療法が推奨されていますがもやもや病に関しては、「慎重に投与する」(推奨度C)と記載されています。
また、通常の脳梗塞に対する点滴療法や抗血小板薬(血をサラサラにする薬)に関しても、明確なエビデンスがない状態です(推奨度C)。したがって、もやもや病に起因する脳梗塞に対しては正解となる治療方法がないというのが現在の状態といえます。ガイドラインの推奨度に関してこちらを参照

・脳出血

通常の高血圧性脳出血と同様に降圧療法(血圧を下げる治療)を検討してもいいとされています(推奨度C)。ただし、血圧が下がりすぎると今度は脳梗塞を起こす可能性があるため、出血発症のもやもや病に関しても正解となる治療方法がないというのが現在の状態といえます。

慢性期の再発予防

脳梗塞もしくは脳出血の再発予防に関しては通常の脳卒中一般に準じて行います。くわしくはほかの脳卒中一般の記事たちをご覧ください。

さらに、もやもや病の管理に関して特有のこととしては

過呼吸を誘発するような行動を慎むこと

が重要と考えます。

具体的には、熱い食事(スープを冷ますために吹く)、激しい運動、笛などの楽器演奏、風船を膨らますなどの行動の禁止です。小児においては啼泣(泣くこと)をさけるのも大事です(←私にも幼児が2人いますが、これはなかなか難しいとは思いますが…)

もやもや病において、過呼吸状態になると脳の血管がさらに収縮してしまうため、脳梗塞を誘発してしまう可能性が高くなってしまいます。

また、嘔吐や下痢に伴う脱水症状にも注意が必要です。

無症候性もやもや病の管理について

もやもや病 1でも書きましたが、基本的には「もやもや病は進行性の病気」です。

脳梗塞や脳出血を発症された方は間違いなく定期的なMRI検査などを提案されると思いますが、偶発的に見つかった方に関しては意見の相違で外来フォローが終了してしまっている可能性もあります。将来的な脳卒中のリスクが高い病気ですので、まずは

無症候でも必ず定期的に脳外科を受診する!!

これがもっとも大事かと思います。

またもやもや病は、成人では約半数が出血発症ですので、やみくもに抗血小板薬(血をさらさらにする薬)を使うのも危険性が高いかと思います。まったくの無症候で内服が出されている方は、なにかほかの理由があるかもしれませんが、一度主治医とお薬に関して相談されたほうがいいかもしれません(脳外科の先生の中にも、特に何も考えず抗血小板薬を処方される方も正直いらっしゃいます…)

今回は、もやもや病の内科的管理や、ご自身で気を付けるべき行動などについてお話させていただきました。では今回はこのあたりで。

投稿者

ちい

神戸某病院で脳卒中外科医をしている「ちい」です。 2児(5歳♂3歳♂)の父親で、趣味でランニングとフィットネスボクシングしています。 脳卒中の1次予防(病気にならない、再発させない)、2次予防(早期発見、適切な治療介入)を中心として一般の方に理解しやすいよう情報発信していきたいとおもいます(不定期・更新頻度はおそめです)。 趣味のダイエットに関する情報も発信していきます。

2件のコメント

  1. 2020年9月に静脈洞血栓症による出血性脳梗塞を発症しました。もやもや病と診断されたことはないのですが、、職業が声楽家です。。
    過呼吸というよりは腹式呼吸、肋間筋の収縮で歌うのですが、息を吐き続けることには変わりありません。歌うことは諦めた方がいいのでしょうか。

    長谷川忍
  2. いつもコメントありがとうございます。
    静脈洞血栓症状による、出血性脳梗塞に関してですが、まずは原因の究明が大事かと思います。ひとえに静脈同血栓症といっても原因が多岐にわたります。
    原因疾患の特定→適切な抗血栓薬の使用→良好な疾患コントロール
    上記ができていれば過呼吸や腹圧をかける動作も可能と考えます。

    ちい

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