こんにちは、ちいです。本日は未破裂脳動脈瘤の自然歴についてお話します。

未破裂脳動脈瘤の有病率

ロッテルダムにおいて2005-2015年に住人5841人にMRI検査を行った研究があります(1)。それによると134人(2.3%)の住人に1つ以上の動脈瘤が見つかりました。これは、従来考えられていた1%程度の有病率より高い結果でした。

動脈瘤の保有しやすい方は?

上記研究では、女性・高血圧・喫煙されている方で有意に多く見られたようです。これは以前から指摘されているリスクファクターと同じ結果でした。
加えて、白血球数の多い対象の動脈瘤が有意にサイズが大きいという結果が得られました。白血球数と瘤の大きさの関連は、体内で起こってる炎症が動脈瘤の成長に関与していることを示唆しています。

くも膜下出血の発症率の推移

未破裂脳動脈瘤は、万が一破裂するとくも膜下出血となり命にかかわることがあります。
近年、生活習慣の改善がくも膜下出血の減少をもたらしているとの報告があります。1980年には7.9人/10万人の発症率であったのに対して2010年には6.1人に減少していました。(2)

日本におけるくも膜下出血

日本においても、2003年→2015年でくも膜下出血の発症数は31.34→27.63人/10万人と11.8%の低下を認めました。それでも世界的にはくも膜下出血の多い民族になります。

まとめ

くも膜下出血は発症すると命に係わる病気です。原因となる未破裂脳動脈瘤は、基本的には発症させないために予防治療しか方法はありません。

しかし、このように生活習慣が改善することで10%程度の発症予防効果があることがわかってきています。加えて日本においては、MRI検査が安価で受けることができます。一度脳ドックなどで血管の状態はみておいてもいいのかもしれません。2%程度の方は動脈瘤が見つかりますが、生活習慣の是正と定期的な検査を行うことで発症リスクを少しでも下げることが可能かと思います。

血圧の管理、喫煙している方は禁煙、また体の炎症を引き起こしている原因(悪玉コレステロールなどは血管壁に炎症を起こすことが知られています)の治療などを行うことで、動脈瘤の増大を防いだり破裂リスクを下げれるものと考えます。

ただし、ある程度の大きさがあると一定の破裂リスクがありますので外科治療が必要です。もし、未破裂脳動脈瘤をお持ちの方は治療の必要性なども主治医と相談されたほうがいいのかと思います。

それでは、本日はこのあたりで。

しかし、ある程度の大きさになるとやはり予防のための手術が必要になります。

投稿者

ちい

神戸某病院で脳卒中外科医をしている「ちい」です。 2児(5歳♂3歳♂)の父親で、趣味でランニングとフィットネスボクシングしています。 脳卒中の1次予防(病気にならない、再発させない)、2次予防(早期発見、適切な治療介入)を中心として一般の方に理解しやすいよう情報発信していきたいとおもいます(不定期・更新頻度はおそめです)。 趣味のダイエットに関する情報も発信していきます。

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